小山地区医師会
地域の皆様へ
小山地区を受動喫煙のないまちに
町医の養生話
学校保健
産業医のご紹介
スポーツ医のご紹介
予防接種
健康診断
在宅医療
介護保険

養生とは

遠乗秀樹(野木町)

 地域で暮らす医者の立場から、「養生」とは・・・と改めて辞書に向かってみることにしました。読んで字のごとし、「養生」とは、「生命を養って長生をはかること」という意味だそうです。私の専門は、精神科で、精神科医として、「長生きをはかる」には何が役に立つかを考えてみると、真っ先に思いつくのが、「良い眠りをとる」ということになります。
 我が国の成人の5人に1人が睡眠障害に苦しんでおり、約20人に1人が過去 1ヶ月に睡眠薬を服用しているという時代になっています。NHKが5年ごとに実施している国民生活時間調査によると、1960年には8時間13分であった平均睡眠時間は、2010年になると、7時間14分と、約1時間短縮しています。世界的にみても、日本は韓国に次いで睡眠時間が短い国になっているようです。よく眠れないことは、個人の単位でみた場合、皆様もご経験がある通り、日中の眠気や倦怠感、イライラ感につながり、社会的にみた場合、仕事の能率の低下に伴う経済的損失、産業事故や交通事故の増加などにつながります。成人の至適睡眠時間は6〜8時間と言われております。「眠れない」となった場合は、以下の4つのパターンが出現します。
1)寝付きが悪い(入眠困難)
2)眠ってから一晩に2回以上目が覚めて眠れない(中途覚醒)
3)通常起きる時間より2時間以上早く目が覚めてしまう(早朝覚醒)
4)眠りが浅く休息感が欠如してしまう(熟眠障害)。
 もし、現在眠れていないとお困りの方がいらっしゃれば、まず、睡眠習慣を見直してみて下さい。例えば、寝酒は睡眠を邪魔するものになります。夜間後半に睡眠が浅くなり、中途覚醒や早朝覚醒を誘発することにつながります。「お酒でよく眠れる」は錯覚です。カフェイン(コーヒーやお茶)の摂取は、カフェインの覚醒作用が数時間持続するため、個人差はありますが、夜間の摂取は好ましくありません。喫煙によるニコチン摂取は、交感神経を活発にする作用があるため、就寝前の喫煙は寝付きの悪さにつながる恐れがあります。これらを見直すだけで睡眠が改善される場合があります。それでもダメな場合、厚生労働省による「睡眠障害対処の12の指針」を確認しつつ実践してみるのも有効になると思われます。以下の通りです。
1) 睡眠時間は人それぞれ、日中の眠気で困らなければ十分
2) 刺激物を避け、眠る前には自分なりのリラックス法
3) 眠たくなってから床につく。就寝時間にこだわりすぎない
4) 同じ時刻に毎日起床
5) 光の利用でよい睡眠
6) 規則正しい三度の食事、規則的な運動習慣
7) 昼寝をするなら、15時前の20〜30分
8) 眠りが浅い時には、むしろ積極的に遅寝・早起きに
9) 睡眠中の激しいイビキ・呼吸停止や足のぴくつき・むずむず感は要注意
10) 十分眠っても日中の眠気が強い時は専門医に
11) 睡眠薬代わりの寝酒は不眠のもと
12) 睡眠薬は医師の指示で正しく使えば安全
 色々お試しになっても上手く眠れない場合、地域の医師に相談して下さい。私自身は良い睡眠をとるためのポイントは、一定のパターンとリズムであると考えております。皆様が良い睡眠をとられて、健康で過ごされますことをお祈り申し上げております。