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ピロリ菌とABC検診
「胃の一生はピロリ菌に感染しているかどうかで決まる」

稲葉俊三(小山市)

■ヘリコバクター・ピロリ菌
 ヘリコバクター・ピロリ菌(ピロリ菌)は、1983 年に発見された人の胃の中に住み着く特殊な細菌です。日本人では 50 歳代以上で感染率が高く、年齢が上がるにつれて 50〜80%の人が感染していると言われています。
 感染している人の多くは子供のころ(5 歳前)に井戸水や便、感染者から直接に感染します。胃の粘膜に定着した菌が、慢性の萎縮性胃炎(粘膜が老化して薄くぺらぺらになってしまう状態)をおこし、そこにいろいろな刺激が加わることによって胃がんになる人が増えてきます。

■ピロリ菌の除菌
 そこで、何かと厄介者のピロリ菌を除菌したくなりますが、以前は胃潰瘍、十二指腸潰瘍の患者さんに限りピロリ菌の除菌が保険で認められていました。しかし、胃がん撲滅を目指して平成 25 年から慢性胃炎でも保険を使って除菌することが可能になりました。
 除菌することにより、潰瘍が予防されるだけでなく、その後の詳しい検査で、胃がんの発症が抑えられることがわかってきました。胃がんは 1990 年代まで日本のがん死亡者数の第 1 位で、今では肺がんに次いで第 2 位ですが患者数はいまだに 1 位です。
 ピロリ菌を除菌することによって老化した胃粘膜がきれいになり、胃がんの発症が約 3 分の 1 になると言われています。ただし、除菌後に発生するがんもあるので、定期的な経過観察は欠かせません。

■ABC 検診(胃がんリスク検診)
 最近自治体や職場の集団検診で、胃がんの ABC 検診(胃がんリスク検診)を行うところが増えてきました。簡単な採血だけでピロリ菌の抗体(ピロリ菌に感染しているかどうか)と、胃粘膜の萎縮の具合を調べて一人一人の胃がんのリスクを調べる方法です。
 ピロリ菌の感染がなく萎縮もない人たちを A 群、感染あり萎縮なしを B 群、感染あり萎縮ありを C 群、萎縮が進みすぎてピロリ菌がいなくなった群を D 群の4群に分けると、胃がんの危険は A から B、C、D の順に高くなります。
 NPO法人日本胃がん予知・診断・治療研究機構によると、胃がんの年間発生率は、B 群で 1000 人に 1 人、C 群で 500 人に 1 人、D 群で 80 人に 1 人といわれています。そこで、B,C,D 群では医師と相談の上、定期的な胃の内視鏡検査を受けることを推奨しています。
 ぜひ、こういった効果的な検診を利用して、早期発見早期治療を心がけましょう。