皆さんにお母様がおられるのは当然です。しかし、「もう一人の母親があなたの身体の中に存在する」と言われたら、あなたはどう思われますか?「俄かに信じがたい」と言われる方が大半でしょう。私も以前は皆さんと同様の考えでしたが、熱病にうなされたかのように「膵臓」のことばかりを言い続けている今の私の印象はちょっと違います。
時々、患者さんから「膵臓は何の為に存在するのか?」と問われることがあります。
教科書的には消化の働きを助けたり・血糖をコントロールすると言うべきなのでしょうが、私は「あたかも母親のように身体を守ってくれる非常に有難い存在」と答えます。
肝臓や腎臓と同様、膵臓も沈黙の臓器と呼ばれていますが、意外にも子供を守る母親のように膵臓は絶えず働き続けているのです。ミルクに頼っている赤ちゃん時代はもちろんのこと、人生の終末期近くなっても、その人が食べ続けている限り膵臓は動きを止めません。その理由はその人を守る為・・・。
赤ん坊のころからの子供に寄り添い、その子の“身体”を知り尽くし、その後に訪れる様々な状況下で降り注ぐ火の粉を振り払い、健やかな成長を見守り、時には強烈な注意信号を発するのが「膵臓」です。そして、この「膵臓」の存在を知り、理解を深めることが出来た方たちには、“母親からのご褒美”が約束される筈です。 |